真空亭雑記帖
当雑記帖は、真空亭住人の見たことやら聞いたことやら読んだことやらについての感想やら評価やらをつづるところである。
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世界最長の小説の作者でもある
アーサー・C・クラーク

 十九日に亡くなったと、十年ぐらいかけてSF好きに進化させた妹からのメールで知る。
 せっかく2001年をクリアしたんだから、どうせなら木星が太陽に変わる2010年にたどり着いてほしかったところだけど、九十一歳ではいたしかたないか。 個人的には、『幼年期の終わり』や『2001年』もさることながら、(たぶん最初の)引退宣言前後の作品が好きで、『宇宙のランデヴー』『地球帝国』『楽園の泉』のいわゆる近未来三部作や長編版の『遥かなる地球の歌』なんかは、こうやってタイトルを並べてるだけで胸が躍る。そして別格ともいえるのは『都市と星』(*1)、今をときめくグレッグ・イーガンが傑作『ディアスポラ』でばっちり下敷きにしている(『マトリックス』にもその影響はある)ことからもうかがえるように、もはやSFにおける普遍的な神話のひとつになっているけど、そんなことはどうでもいいくらいにいまだ面白い。

ここのところは、共作ばかり(おそらく原案のみ)で、単独としては『3001年終局への旅』が最終作、といってもそれ以前の『グランドバンクスの幻影』『神の鉄槌』辺りから、本筋などあって無きが如き、いかにも興の向くままに書いてますといった風情の、優游自在(*2)というか天衣無縫というか行きあたりばったりというか、そういう作品ばかりだったので、小説家としてはかなり前から実質引退状態だったのかなとも思うけれど、それでもいつか単独の新作が読めるかも、という希望があるかないかではやっぱり違う。というか、書かなくても、生きてなにかコメントがあるだけでもありがたい人であった。アシモフ、ハインラインと並ぶ御三家であり、SF界における「失われた世代」は、これでもうレイブラッドベリぐらいしか生き残ってないのかもしれない。

 HALはまだ誕生してないけど、彼が最初に思いついた通信衛星がすでに高度情報化文明の一助となっているこの社会はある意味、クラークの夢想した未来そのものであり、見ようによっては、我々は彼の創り出した世界に生きていることになる。偉大、という言葉では卑小すぎる賛辞になってしまう人であったと思う。


(*1)原型である『銀河帝国の崩壊』はSF界のもうひとりのグレッグである、ベンフォードのつけた続編とあわさって、『悠久の銀河帝国』というまるで違う作品として読めるようになった。これはこれで面白い。
(*2)この言葉は末期のディックをさすより、晩年のクラーク翁にこそふさわしいと思う


『都市と星』をお勧めしようと思ったら、品切れだという。何をやってるのだ早川書房。
代わりというか、これはこれでまったくタイプの違う傑作なので、お勧めしたい。
SFにおいてこれまた常識のようになっている軌道エレベーターものの嚆矢(のひとつ)である。
ラストは思い返すだけで胸が熱くなる。
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