真空亭雑記帖
当雑記帖は、真空亭住人の見たことやら聞いたことやら読んだことやらについての感想やら評価やらをつづるところである。
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スティーヴン・スピルバーグ『インディジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』
 十九年ぶりの新作である。スピルバーグは『A・I』あたりから、どんどん壊れ始めたというかその変態性暗黒性を隠しもしなくなり、中期よりも断然面白い作家になってきているのだが、ハリソン・フォードはもうどう見てもアクション映画に向く年齢ではないし、予告編でのあきらかにおじいさんのものである挙動を見る限り、実態もアクション映画に向かないようにしか思えないうえ、そもそもインディアナ・ジョーンズというキャラクターにこのブランクを乗り越えられる魅力があったかというと、どうも違うような気がする(基本的にはルーカスのコンセプトとスピルバーグのセンスのコラボレーションの魔法によるところが多かったと思っていた。個人的にもハリソン・フォードのキャラクターとしてはハン・ソロとかジョン・ブックとかデッカードのほうがいい)と、どうにも及び腰になってしまう「待望」の第四作で、それは公開初日の第一回まえの新宿プラザの開場三十分ぐらい前に「ああこれは立ち見かもな」と思いながら息を切らせつつたどりついたらば、意外にならんでなくて拍子抜けした、というぐらいものである。だいたい、「スターウォーズエピソード1」の初日初回の五分の一にも足りない程度しか客が並んでいなかったのではなかろうか。客層的にもおそらく十九年前にも同じこの新宿プラザで『最後の聖戦』を見ているような人たちが多く、やっぱり当時を知らない世代にはハムナプトラ(これはこれでおもしろいけど)とかウォンテッドみたいなもののほうがいいのか、と寂しいような気持ちになる。
 前置きが長くなった。さてそんな風な微妙な心地で見た『クリスタルスカルノ王国』だけど、出来はどうだったかというと、「ふつうに四作目だった」。
 現実と同じく作中でも十九年が経過し、インディアナ・ジョーンズ教授はちゃんとおじいちゃんになり、まさに老骨鞭打っての大活躍(といっても今回は鞭のアクションはあまりないが)。無理に若作りせず、ご老体ゆえの危なっかしさを無理なく前提化したのは脚本の勝利。過去三作の熱心な観客ならば、この「老人」が実は以前よりはるかに強くなっている――なんと言っても屈強なナチの兵隊たちを一撃で車外に放り出せるぐらいなのだ――ことに気づくだろうが、序盤のおなかと腰でもたもた走っているフォードをまのあたりにしたあとなので、この「強力化」もようするに格闘シーンの省略するためのも口実としてやむなしと思うだろうし、その辺に詳しくない客ならば、この、老人のくせに異常な腕力と体力のある男を、ただならぬ人物だと思うだろう。この役者の性能の劣化をむしろ武器とするやり方は、かつてのこのシリーズではぐくんだ節約と即興による早撮りのノウハウの感覚の応用とすら言えるかもしれない。『レイダース』撮影時の有名な逸話――腹痛のフォードのために大アクションをギャグで片付けてしまう感覚にも似ている。
 かくして、ヒーローはヒーローとして復権し、スピルバーグによる快適なテンポの物語のなかを活き活きと動き始める。しかし、残念なのは英雄の介添え役たるシャイア・ラブーフ、敵役となるケイト・ウィンスレットといったあたりのキャラクターの弱さで、ラブーフはそもそもルックスにしても演技にしても、ジュニアのジュニア的な魅力が皆無だし、ウィンスレットは本人はノリノリで悪くないのだが、物語的にもいまいち奥行きのある人物として描かれていないので、インパクトに欠ける。やりようによってはもっと怖くもっと面白い人になったと思うのだが、惜しいことである。
 お話のほうは、船頭多くして船に山に登るというの奴の典型というか、難航したはずなのに底も浅いし、ひねりにもとぼしいのだが、シリーズの水準に忠実というか、はなからそこに売りのある作品ではないから、これは問題ないだろう。いつ殺されるかもしれない状況なのに大声で子供の学業問題で口げんかするとか、蛇をロープとか、無駄に長い「黒い絨毯」のシークエンスとか、バランスも構成もかなり粗雑かつ不安定なのだが、むしろ洗練されたシナリオになっていたら、変わってしまったとがっかりしてしまうかもしれない。
 終盤の視覚的な見せ場は、壮大なようでいて、それなのにコップの中の嵐のような、どこかお手軽な「未知との遭遇」感覚が面白い。スペクタクルといえば、序盤のネバダでの実験シーンだろうが、アメリカですら悪趣味と不評だったらしい冷蔵庫関連のエピソードも、スピルバーグのグロ趣味を思えば、むしろ気を遣ってるのではないかとすら思える。なんといっても大好きな人体損壊場面が、人形で済んでいるのだ。
 特筆すべきは、カットを割りすぎないアクション。今風の映画だと、もうなにがどうなってるか判然としなくても、ともかく細切れのショットを暴力的なハイテンポでつなぎ合わせて、ハイ息も継がせるアクションでございというパターンが多いが、ここでは、このシリーズの作り手たち、つまりルーカスとスピルバーグが範としたヒッチコックであるとか初期の007であるといった、アクション映画の古典に通じるスタイルでありながら、たとえば、カーチェイスと同時多発する取っ組み合い殴り合い、フェンシングのもつれあいをそれこそ息も継がせない面白さで鮮やかにさばいてみせるのだから、やはりこの人たちは侮れない。
 オチは、まだ続きがありそうで、多分ないだろうという、英雄は死なず惜しまれつつ去る、そういう美しい終わりかた。風の吹き込みかたが妙にわざとらしいから、なにかひとひねりあるかと思ったらそれはこちらの勘違いだったようである。あの人の幽霊でも出ればいいのかなとは思ったがそれだとジェダイかも知れない。
 続きは期待しないし、これで終わりでいいとおもうのだが、もし続きが作られたらやっぱり(不安に駆られつつも)見に行ってしまうだろう。これはそういうシリーズで、これはそういう映画なのだった。
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テーマ:撮影中、公開前の映画 - ジャンル:映画

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